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No.141(2016/9) 「一灯」

 

No.141

 釈尊成道の地はブッダガヤであるということは誰でも知っていますが、実はそのことを知るようになったのはたった百数十年余り前です。
 日本人で初めてブッダガヤを訪れたのは北畠道龍師です。師は西本願寺の宗務総長を解任され、訪欧の機会を得ますが、その折の明治16年にブッダガヤの大塔を礼拝されました。アレクサンダー・カンニガムによって発掘された3年後のことです。そして師は、その地は釈尊涅槃の地であると記しておられます。そのことからもわかるように、釈尊成道の地であると判明したのはそんなに遠い昔のことではありません。
 今ではブッダガヤは国際仏教村のようになり仏教各国の寺院が乱立しています。タイだけでも40 ヶ寺ほどあり、各国の巡礼者であふれていますが日本の巡礼団は年々減少しています。私は43年前から1年を除き毎年インドに調査、研究に出かけていますが、仏跡だけでなくインドを旅する日本の若者は80年代を境に減少し、逆に韓国や台湾の若者の方が増しています。
 ブッダガヤの大菩提寺の境内では、巡礼者(主にチベット難民)は全面灯明やローソクで荘厳し祈り続けてきました。それは人々の仏に対する信仰心でもありました。お金のある人は数多く献灯し、お金のない人は一灯でも献灯し、毎夜、万灯で境内が荘重な雰囲気で満ちあふれていました。炎が一つ一つ違い、「みんな違ってみんな良い」を感じます。その油煙のために大塔西側の釈尊の成道の象徴としての菩提樹が弱り、10年程前から境内南側に棟を建て、そこが献灯所となりました。仏教、特に浄土教では灯、光を大切にします。「智慧の光明量りなし」。智慧があれば愛も慈悲も解釈できます。
 釈尊入滅後、仏教は分派していきましたが、何事も元の教えが基本です。私は来年一年間「興福寺と法相柱祖師絵展」の企画があり、制作の最終段階に入っています。興福寺は元々「唯識」を学ぶ学場です。ヴァスバンドゥ(世親、天親とも言う)は『唯識三十頌』を書かれています。安田理深先生も、本多弘之先生も唯識と深く関わっておられます。仏教は年齢や性別や派閥ではありません。大谷大学は一般の大学ではなく、生き方を学ぶ大学であり、仏教興隆の役目であることのしっかりとした認識が必要であると思っています。

畠中光享(1970年文学部卒)
日本画家・大谷大学非常勤講師

 

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