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無盡燈ギャラリー・畠中光享の世界

No.137(2012/9) 「合掌」
No.137
 仏さまにお参りするときに両手を合わせ、合掌します。インドではあいさつをする時に「ナマステ」、もう少し丁寧に言いますと「ナマスカール」と言います。これはあなたに対して合掌しますという意味がありますので合掌して言わなければなりません。合掌する姿は美しいものです。
 今春初めてビルマ(ミャンマー)に行きました。私はビルマにいる間中1957年に大谷大学を卒業されている池田正隆先生の著書『ビルマ仏教』を持ち歩きましたが、それはそれは興味深い本です。仏像のこと、経典に巻く紐のこと、蓮糸から織った布のことの調査が目的でしたが、どれも予想以上の収穫がありました。バガンの3,000ものパヤー(仏塔)や仏殿にあたるグーには11世紀から13世紀の壁画が、稚拙さや安価な酸化鉄系統の絵具を中心に緑青を用いて、傷みが多いながらも大量に残っているのも興味深いものでした。バガンの仏像は中国の元朝の攻撃にあい、14世紀にはそのほとんどが破壊されました。現在はバガンだけでなくビルマの仏像のほとんどが今様に修復され、頭光は電飾化され、赤やピンクで化粧された唇は妙になまめかしいのですが、そういった修復も仏教が人々と共にあることの証といえます。どこにいっても早朝は托鉢する出家者と供養するために夜明け前から米を炊いて待つ人々に出会います。旧都ヤンゴン(ラングーン)の中心には100メートル近い高さのシュエダゴンパヤーがありますが、その巨大な仏塔のまわりには、合掌をして願い事を唱えている人々を限りなく見かけます。現世の利益を求めるのも人間の自然な心なのかと思いました。合掌して祈る姿の美しさもあらためて感じさせられました。
畠中光享(1970年文学部卒)
日本画家・大谷大学非常勤講師
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