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無盡燈ギャラリー・畠中光享の世界

No.110(1998/10) 聴聞
No.110
 背景はグリドゥラクタ(霊鷲山)から見える風景である。ここで釈尊は多くの経を説かれたが、その中でも私達にとって重要な、浄土三部経のうち、大無量寿経と観無量寿経を説かれた所とされている。絵の中の娘は経を聴聞しようとする私であり、衆生の化身として描いた。赤い風景としたのは、密教の五仏の中の阿弥陀仏の色は赤で表現するので、阿弥陀の色として描いた。グリドゥラクタの近くには、ラージャグリハ(王舎城)の遺跡があり、釈尊在世当時の姿を想起できる。
 インドの多くの仏跡は、初代のインド考古調査局長のアレクサンダー・カンニガムによって19世紀末に次々と発見されているが、グリドゥラクタは1903年西本願寺大谷光瑞法主の探険隊によって発見されている。光瑞師は中央アジア探険で有名であるが、その探険の根元は漢訳しか残っていない観無量寿経の原本(パーリーやサンスクリット本)を求めての探険であった。
 グリドゥラクタは、王舎城五山の一つであるラトナギリ(多宝山)の山麓の出っ張ったところに位置する。五山にはそれぞれに精舎があり仏教修行の場であった。それに倣って中国の天台五山や京都や鎌倉の五山が定められた。
畠中光享(1970年文学部卒)
日本画家・大谷大学非常勤講師
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