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無盡燈ギャラリー・畠中光享の世界

No.114(2000/10) 祇園香堂趾(部分)
No.114
 出家者は托鉢でもって食物を得なければならなかった。教団の出家者が増えると、それだけの人数の食を得るには都市の近くに居住を余儀なくされた。『阿弥陀経』は舎衛国の祇樹給孤独園に1,250人の悟りをひらいた比丘がいた時に、というくだりから始まっている。
 祇園精舎趾は、今でも仏跡らしさを残している。私が最初、26年も前にこの地を訪れた時は、それこそ静寂の地であり、釈尊在住を実感した場所である。遺跡は広く、多くの基壇の遺構が残っているが、この絵の場所は釈尊が住まわれていたという香堂であり、最も神聖視された場所である。巡礼者は必ずここで礼拝や瞑想をする。あがり口のところに小奉献塔があり、南伝仏教徒はそれに金箔を押して供養している。夕刻の荘厳な香堂趾を描きたかった。
 祇園精舎遺構には、私たちにとって最も縁のある『阿弥陀経』説法跡と伝えられているところがある。それはあまり知られていないが、香堂趾の南東に位置するところにひっそりとある。ある時、中国(台湾)の尼僧の参拝団が、念仏を唱えて常行三昧を長らく行っていたのが印象深い。ここは個人的にも私にとってある理由で大切な場所であるが、この場所で『阿弥陀経』を説かれた姿を観想すると、さらにありがたさが込み上げてくる。
畠中光享(1970年文学部卒)
日本画家・大谷大学非常勤講師
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