大谷大学同窓会 無盡燈
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無盡燈ギャラリー・畠中光享の世界

No.117(2002/3) 正 見
No.117
 釈尊生誕の地ルンビニから晴れて空気が澄んだ日には遥か遠くにくっきりとヒマラヤが見える。仏跡では唯一ここはネパール領である。現在近くの国境越えはバイラワとスナウリ間である。雑然とした国境の街を越えるしかなく、ルンビニと釈迦族の都城趾と言われているピプラハワ間は不便で丸一日を要してしまう。25年前はインドからルンビニヘの最短のルートが聖地巡礼(ダルマ・ヤートラ)のためにひらかれていた。
 ピプラハワからルンビニまではたった29km、田園の国境のチェックポストからルンビニまではたった10km、のんびりとした畑の道をリキシャで往き来することができた。春は菜の花そっくりのマスタードの花の一面の黄色の中を、そのむせかえるような香りを吸いながら、遠くのヒマラヤを見ながらルンビニに向かった。
 ルンビニの南門の前には村があり、夜もバザールが賑わっていたが、その村も遺跡の西側遠くに移転させられてしまった。ルンビニ遺跡は公園化され必要としないベンチが置かれ、何よりも大切にされ、信仰の対象であったマーヤ堂と巨大な菩提樹は、建て替えるという名目のもと、日本の仏教会により堂は取り壊され、菩提樹は根こそぎ伐採されてしまった。菩提樹の伐採は、今も世界の仏教徒の悲しみである。
 釈尊の説かれた八正道、とりわけ正しくものごとを見ていかねば、とり返しのつかないまちがいをおこすことになる。
畠中光享(1970年文学部卒)
日本画家・大谷大学非常勤講師
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