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無盡燈ギャラリー・畠中光享の世界

No.126(2006/9) 「蓮華」
No.126
 蓮や牡丹の花は、花の中でも特に美しく、華麗で豪華で花の王といって良いほど、目を見張らせるものがあります。蓮と仏教は深い関連があります。ちなみに仏画に描かれている牡丹は、西藏や中国の、蓮のない地域で蓮の代用として描かれたことから始まっています。蓮は阿弥陀経の中では、このように見事に美しく飾られ表現されています。「極楽の池の中には車輪ぐらいの大きさの蓮華が咲いている。その青い華からは青い光が 黄色の華からは黄の光が 赤い華からは赤い光が 白い華からは白い光が発せられそれぞれが美しく清らかな香りを漂わせている。」
 釈尊が入滅されて以来約600年近くは人間の形としての仏像は創られませんでした。35歳で成道され仏陀となられた覚者を、恐れ多くて人間の形で表現できなかったのです。最初は礼拝の対象としては遺骨を奉った仏塔のみでしたが、次第に釈尊の生涯の四大事蹟、誕生、成道、初転法輪、涅槃にそれぞれ象徴的な形を表現してゆきました。誕生の象徴に蓮、成道は菩提樹または金剛宝座、初めての説法、初転法輪には法輪、涅槃は仏塔とそれぞれを象徴として造形されました。インドで釈尊の誕生の象徴である蓮は数限りないほど、これまでに彫刻や絵画で表現されてきました。汚れた泥の中からでも美しい花を開く蓮はまさに釈尊誕生の象徴としてぴったりだったのでしょう。インドでは蓮と睡蓮は区別していません。サンチー第二塔の欄楯(仏界と俗界を仕切る結界にあたる石の柵)の彫刻には数多くの蓮と睡蓮をモチーフとした浮彫があります。それは2000年以上も前に彫られたものとは思えないほど、斬新なデザインでどれひとつ同じものはありません。
 蓮のようにどんなに汚れた世界であっても一人一人が美しい花を咲かせたいものです。
畠中光享(1970年文学部卒)
日本画家・大谷大学非常勤講師
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