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現役教員からのお便り

No.148(2023年)

変わらない問い
大谷大学教授 渡辺 啓真

 1992年に教員として大谷大学にご縁をいただいてから30年が過ぎました。その前半は、在学生数がピークの時期で、哲学科に加えて93年度開設の国際文化学科、そして2000年度開設の人文情報学科と、複数の学科に関わる機会を得ました。多様な学生さんと出会い、学科や部門を超えた先輩、同僚教職員の方々に導かれて、自転車操業の日々ながら、育てていただきました。その後、近年の複数学部化などを経て、なにより2020年からの新型コロナ感染症によって強いられた危機を経験しましたが、そうした変化の中でも、毎年変わることなく二十歳前後の人びとと学びをともにできていることに、大谷大学という学場のもつ伝統の力を実感しています。
 変わらないといえば、人文情報学科開設以降20年あまり担当し続けてきた科目に「情報と倫理」(以前は情報倫理論という名称でした)があります。急激な情報環境の変化によって生じた新たな問題をフォローするだけで四苦八苦しているうちに、デジタル・ネイティブの学生さんを眼前にすることになりましたが、講義で主として取り上げる問いそのものはそれほど変わっていません。なかでもプライバシー、個人情報とそれに関わる人間関係の問題は、つねに受講生の関心をひくようです。私たちの自他の関係が、いや「自分」そのものが、状況の変化のなかで脆く流動的であること、しかしその中でなんとか交通を続けることによってしか、わたしたちは個であると同時に人-間たりえないこと、それはどの世代にとっても切実な現実であり課題だからでしょう。コロナ下でのソーシャル・ディスタンス、マスク、アクリル板といった新たな「仕切り」の登場や、それに伴う軋轢や新たな交流のかたちも、SNS時代に揺れ動く人の間の皮膜への問いをより鮮明に可視化し提起しているように思われます。問うこと自体が自己創造でもあるようなそうした問題を、今年も学生さんとともに考えることができそうです。


「ほんとう」を問い続ける保育を求めて -大谷幼教の保育者養成-
大谷大学准教授 西村 美紀

 「大谷幼教」は、保育者(保育士、幼稚園教諭、保育教諭)を養成する「保育者養成校」として今年で56年が経ちました。1966年に短期大学部幼児教育科として2年間での養成を開始し、2006年幼児教育保育科と名称変更を経て、2018年教育学部教育学科幼児教育コース(80名定員)として4年制養成校へとリニューアルしました。
 2008年に着任した私にとっても、4年制養成の開始はやはり大きな出来事でし た。この養成課程を作っていくチームに入れてもらった際、まず<大谷幼教で大切にされてきたこと>とはなんだろうか、という問い直しを丁寧に行い、様々な角度から議論しました。最終的に、<人・子どもを大切にする保育者><子どものいのち、思い、育ちを大切にする保育とはどういうことかを問い続ける保育者>を養成したいということが確認できました。そしてそのためには、<保育者自身も成長し続けること>が求められるだろう。そしてその成長は、子どもたちや他の保育者や保護者といった他者との関係のなかで起こってくるものだし、そうあってほしい、との願いを強くしたのです。
 このような願いをもとに、1年生後期から4年生にかけて、現場での実践体験活動や実習をとおして体験的に学び、それを多様な方面から振り返りができるようカリキュラムを構成しました。コロナ禍を経て、今後さまざまな行事活動も順次、再構成し再開していく予定です。慶聞館の教室で理論の勉強をしたかと思えば、オペレッタの練習に!と2号館へ駆けていき、空き時間にはLinden(リンデン、大谷大学の子育て支援)の準備だと赤ちゃん人形でふれあい遊びの練習をしたり、学年をこえた公園での活動を計画したり…2年制から4年制になって、すこしゆったり?と思いきや、やはりそこは幼教。あいかわらず教員・学生共々忙しく、活発に活動中です。
 4年制になってからの2期生がこの春現場に巣立ち、6期生が新入生として大谷幼教に加わりました。日々忙しく走り回りながらではありますが、大谷幼教の理念を何度も問い直し、一人ひとりの学生を大切に育てていきたいと気持ちもあらたに春を過ごしています。

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