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現役教員からのお便り

No.150(2025年)

「反面教師」
教育学部教育学科:初等教育コース 教授 
 関口 敏美(せきぐち としみ)

     老舗女子大の共学化や募集停止が相次いだ。私も女子大出身だが、女子大は今の時代には合わなくなったのだろう。戦前の大学令では女子大学は存在せず、老舗女子大の前身は旧制女子専門学校である。戦後、新制大学への切り替えと共に女子大学が認可され、高度経済成長期の進学率上昇により女子大・女子短大が急増したのだ。
 本学に就職した90年代初頭は、短期大学部からの3年次編入者も多かった。周囲から「女子は短大でいい」と言われたが、2年間で家族を説得したと語る学生もいた。授業で高度経済成長期の状況を説明しても、今の学生には、「女子は短大(あるいは女子大)でいい」という社会の価値観が女子の進路を制限した時代を想像しにくいようだ。
 小6時の担任(男性)が、一般論として「中高に進むと女子は成績が伸び止まるが、男子は大器晩成型が多い」と発言したことが今も忘れられない。おそらくは悪気なく当時の社会的な常識を口にしただけなのだろうが、「女子はどうせ専業主婦になるのだから成績が伸びなくても大丈夫」と言われたような気がして嫌な感じがした。
 専業主婦率が高かった時代から半世紀が過ぎ、今や専業主婦は絶滅危惧種である。男女共に就労することが当然だと考えれば、性別役割分業型家族を前提とする女子教育が衰えるのは自然の成り行きだ。現在の女子たちが進路選択で葛藤しなくてもよくなったこと自体は、社会変化の方向としては悪いことではない。
 50年もたてば、徐々に社会の価値観も変わる。教育学部で小学校教員養成に携わりつつ思うことは、社会を動かす側に自分も在ることを意識して子どもたちと関わってほしいということだ。悪気なく子どもの未来に呪いの言葉を吐くことがないように。私が教育史に進んだきっかけは小6時の担任に対する違和感だったのかもしれない。


変わらないために、変わり続ける
国際学部国際文化学科 教授 
廣川 智貴(ひろかわ ともき)

   同窓生のみなさま、いかがお過ごしでしょうか。国際学部でドイツ文化を担当しております廣川と申します。谷大の教壇に立ってから早いもので約20年が経過しました。年齢も50を過ぎ、最近ではドイツ文学を学びはじめた頃のことをよく思い出します。この大学でドイツ文学を学べるとも知らずに入学した私でしたが、友田孝興先生、禿憲仁先生、大河内了義先生、アルブレヒト・デッケ=コルニル先生といった、すばらしい先生方のご指導のおかげで、ドイツ文学を学ぶのみならず、いつしかそれを生業とするようになりました。この4名の先生方におよそ2時間にわたって口述試問をしていただいたのもよい思い出です。
 当時のキャンパスは現在のそれとはまったく別のものでした。慶聞館のあるところには図書館があり、響流館は体育館でした。変わったのは建物だけではありません。私が学び、教員として着任した伝統ある文学科ドイツ文学コースも、大学改編のため残念ながらもはや存在しません。卒業生から「さみしい」という声を聞くと、私の胸は今でも痛みます。でも、あることがきっかけで、少しずつ前向きに考えられるようになりました。
 創業数百年という京都の某老舗企業を訪問したときのことです。開口一番、担当の方はこう話されました。「私どもは変わらないために、変わり続けております」。ふと自分のことのように思いました。たしかにドイツ文学コースはもうない。でも、これまで受け継がれてきた伝統の中に私が生きていると気づいたからです。授業をしていると、当時の先生ならどう説明されるだろうかと考えることがよくあります。そしてそれを学生に伝えるのが私の日常です。とてもささやかな例ですが、これが私には伝統、変わらないものであるように思われます。より魅力ある大学となるために、これからも谷大は変わってゆくでしょう。でもご安心ください。それは変わらないためなのですから。卒業生のみなさまには、そのような母校をあたたかく見守っていただければ幸いです。

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