無盡燈/尋源館
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No.146(2021/6) 「アムリタ(無量寿水)」

No.146

 我が国の古事記の最初の国づくりと似ているが(インドから伝わったと考えられる)、インドでは最初、世界が乳海であり、そこに先ずメール山(須弥山)を立て亀に化身したヴィシュヌが乳海内に土台としてそのメール山を乗せ、大蛇をロープとして山を巻き、神々と悪魔群が左右から蛇のロープを攪拌して大地を持ち上げ国をつくったとされている。その乳海攪拌の折、太陽や月などさまざまなものが乳海から生まれたが、その一つがアムリタ(無量寿水)である。アムリタは阿弥陀仏の語源と言える。
 親鸞聖人は「正信偈」の最初に「帰命無量寿如来」「南無不可思議光如来または仏」と阿弥陀仏を二つにわけて帰依されている。如来(タターガタ Tathāgata真理を悟った者)と仏(ブッダ Buddha目覚めた者)で言葉は違うが同義語である。浄土真宗ではどうしても阿弥陀仏の四十八願を光に譬えているので、無量光仏(アミタ―バ Amitābha)の方が大切な教えのようにされているが、無量寿仏(アミターユス Amitāyus)の方も大切に考えなければならない。
 私たちは限りない命の一瞬を生きていることを知れば、生死を超えることができる。
 インドでは夜明けの太陽に向かって水を捧げる。それはアムリタの象徴である。朝のお勤めとは意外とこのような素朴なことから始まったのではないかと思える。限りない命の中の尊い行いであり、美しい行為である。
 コロナウイルス禍も二年目に入った。我が国ではいまだワクチンも特効薬も出来ないでいる。ものごとは移りゆく。コロナも三年も経てば終息に向かうであろう。「八正道」を観想し、行じて生きることと思っている。

畠中光享(1970年文学部卒)
日本画家・インド美術研究者


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